ほっとハウスが生まれるまで③
2026年07月27日
前回のお話では開拓エリアとしてまず杵築市を選択し、その中でも建物の建築工事を受注させて頂きたい候補者の絞り込みまで終えた所で終わりました。
最有力候補者は地元の方から最初に教えて頂いた方で、既にアパートや貸家を多数所有している、地元でも有名な大地主Aさんでした。
そこで今後Aさんにどの様にして近づき、そして最終的には信頼関係を築く領域に至るまで、どの様な攻略法を組み立てて行くかが大きなポイントとなるのですが、Aさんと何か繋がりそうなコネクションでもないか自社の社長にも探ってもらいましたが、残念ながらこれと言って有力な人脈にはありつけませんでした。
ところで実を申しますと候補者を絞る前の段階にまで話が遡るのですが、開拓エリアを杵築に確定するにあたり、社内報告の為にもそれなりのデータは必要でした。「私の勘では、ここが良いと思います。」程度の話では会社のトップも納得するはずがないので、杵築から国東に掛けて進出してきたハイテク企業の数と従業員の数、そしてそれに対して現存する賃貸物件の棟数・戸数がどの位あるのかをリストアップしてまとめました。この様な市場調査は社内報告のみならず、賃貸物件を建築させて頂くオーナー様に対しても説得力のある資料となりますので、時間を掛けて丁寧にまとめ上げました。
そして分かった事は、地元採用による自宅通勤者の数をある程度差し引いたとしても、賃貸物件の戸数はまだまだ不足している事、そして既に存在している賃貸物件も、そこそこ築年数の経った古いものが多いと言う事でした。
県のテクノポリス構想に詳しい方を社長から紹介してもらい、電話でその方にそのエリアの住環境に関しても何か知っている情報が有れば教えて頂きたいと伺った事もあります。その内容はこちらで調べたデータにも裏付けがある通り、やはり住居不足を訴えている企業が割と多いとの話でした。
そこで私がAさんに近づく為の手法として考えたのは、まずは建築会社の営業マンとして近づくのではなく、アパートの入居をお世話する不動産会社として近づく方がハードルが低く、より確実なのではないかという事でした。何件かこちらで入居者を決めてあげて、それでお近づきになろうと言う「ゴマ擦り作戦」の決行でした。私の会社は建設業がメインではありましたが、大分市内では宅地分譲も手掛けていましたので、当然宅建業の資格もあり、賃貸物件の紹介に関しましては何の問題もありませんでした。
そして先にも話しました様に、確かに賃貸物件を探している企業があるとの情報までは得ていました。しかし実際に入居希望者を募るのであれば、又聞きの様なアバウトなものではなく、もっと具体的な需要を裏付ける情報が欲しかったので、ならば直接聞いた方が早いんじゃないかと考え、ダメもとで空港に近い大手企業のB株式会社へ直接電話を入れてみたのです。すると意外にもすんなりと総務の方に繋いでもらえましたので「○○ハウスの松岡と申します。突然の御電話で大変恐縮ですが、御社では従業員の方が入居を希望される賃貸物件の情報などは御入用でしょうか?」と聞きました。
すると自社名が○○ハウスである事も功を奏したのか、先方は不動産業者からの電話だと思ったのでしょう。しかも私が物件情報を既にいくつか持っている様な含みを持たせる言い方をしましたので、総務の方からは「えっ、賃貸物件ですか?探していますよ。情報があったら是非とも紹介して下さい。」と言われたのです。
そこで「それでは物件資料を取り揃えて、後日改めてお伺い致します。」と現段階ではまだ手ぶらの状態でありましたので、時間稼ぎの為にそう答えました所「いや、わざわざ来て頂かなくても今からFAXで送ってもらえば大丈夫ですよ。」と言われてしまい、ちょっと焦ったのですが「いえいえ、資料につきましてもきちんと大事な点を御説明させて頂きたいですし、今後も継続的に御紹介をさせて頂きたいので、是非とも御挨拶を兼ねて一度お伺いさせて下さい。」と伝えて、なんとか了承を得る事が出来たのでした。思い起こせば、この時の1本の電話がそれ以降の道を切り開く大きなカギとなった事は間違いありませんでした。
しかしのんきに喜んでいる場合ではありません。弾の入っていない銃を先に構えてしまいましたので、ここから先が大変です。急いで銃弾を調達しなければ、獲物を撃つ事さえ出来ません。そこで電話を切るとすぐに車を杵築へ走らせ、Aさんの御自宅へと向かいました。この段階で私の心情と致しましては、Aさんへのアプローチに気を遣うと言うよりは、むしろB株式会社の総務の方との約束を確実に果たさなければならないと言う方向へかなり傾いていました。
そこでなんら躊躇する事なくAさんの御自宅を突撃訪問致しました。するとAさんはちょうど家にいらっしゃったのですが、見知らぬ訪問者が突然現れて「今空いているアパートの部屋を全部紹介してもらえませんか?」と言うものですから、かなり警戒をされました。しかし私が「B株式会社の総務の方からの御依頼でもございますので、是非とも宜しくお願い致します!」と伝えました所、Aさんも「おぉ、そうか。B株式会社が依頼する程の会社なら間違いないだろう。まぁ上がりなさい。」と言って警戒心を解いて下さったのです。実際にはB株式会社の総務の方とは、たった一度電話で話しただけでしたが「いやいや、別に自分は嘘を言ってないよなぁ…(汗)」と心の中でつぶやいていました。
それでもAさんからは「お宅が紹介して入居が決まったら、うちはお宅にどの位の手数料を払わなければならないの?」と聞かれましたので「いえいえ、賃貸借契約が成立した場合は基本的に入居者側より仲介手数料を頂きますので、大家様からは1円も頂きません。」と答えた所、Aさんにとっては空き部屋にタダで大手企業の社員を入れてくれる業者が現れたという話なので、メリット以外の何ものでもない事をすぐに認識されたのでしょう、その日のうちに全ての空き部屋を紹介して下さいました。
そして細かい物件情報と契約条件を伺い、間取図もスケッチして急いで会社へ戻り、B株式会社の総務の方へ渡す為の物件資料を大至急作り上げたのでした。最初はAさんとのファースト・コンタクトをどの様にすべきか、かなり気を揉んでいたのですが、B株式会社の総務の方へ電話を入れた事で一気に事が進み、気が付いたらAさんとの人間関係を築くのに思ったほど時間は掛かりませんでした。
かくして私はAさんと出会う事が出来ました。そしてこの先もまだまだ色んな事が起きますが、取り敢えず今回はここまでにしておきます。
