ほっとハウスが生まれるまで④

2026年08月03日

前回はAさんと出会い、空き物件の紹介をしてもらった所までお話し致しました。

 

結局4~5件程の物件を紹介してもらい、それから物件資料を大至急作成致しました。B株式会社へ持ち込む為の資料としては、まぁ恥ずかしくない位の量の資料を取り揃える事が出来ましたので、改めてB株式会社の総務の方へ連絡を致しまして、訪問日時を決めさせて頂きました。

 

そしていざB株式会社を訪問致しますと、まずは警備員室で受付を致しまして、それから敷地内へと入ります。そして車から降りると、一歩ずつ歩いて大きな建物へと向かうのですが、建物入口まで近づいて来ると徐々に緊張感が増して来るのが自分でも分かりました。何だか勢いでここまで来てしまったけど、本当に大丈夫なのかなと少し不安に駆られました。

 

そして受付で要件を伝え緊張しながら待っていると、程なく総務課のCさんが見えられて、にこやかな表情で温かく迎え入れて下さいましたので、少しだけほっとしたのを記憶しています。それから打ち合わせ室に招いて頂き、そこで簡単な自己紹介を済ませると、すぐに物件資料をCさんへお渡ししたのでした。

 

Cさんは資料を受け取ると「それでは早速、拝見させて頂きますね。」と仰られ、物件資料に目を通し始めました。そして軽く頷きながら一通りの資料に目を通すと、おもむろに顔を上げて「なるほど。ところでこれらの物件は全てAさんの物件ですよね。我々もAさんとは以前からお付き合いがありますので、これらの物件の事は良く存じ上げておりますよ。」と言われてしまいました。

 

この瞬間、私は自らが犯した重大な過ちに気付き、何という薄っぺらな発想の上に自分は計画を組み立てていたんだろうと正直後悔致しました。我々がしゃしゃり出て来るまでもなく、大手企業と地元で一番多くの賃貸物件を持っているオーナーとの間柄であれば、これまでもお付き合いがあるのは当然の事じゃないですか。Cさんより「わざわざ大分から出て来て、既に取引のある相手方との間に割り込もうとして、あなた方は一体何がしたいの?」と思われているんじゃないかと想像し、目の前が真っ暗になる思いでした。早くこの場から立ち去りたいとまで思いました。

そこで私は出来る限りの愛想笑いを浮かべ「そうですよねー。Aさんとはお付き合いがあって当然ですよねー。まぁ今さら我々が出て来て、わざわざ物件を紹介するまでも無かったって話ですよねー。」と声を振り絞ってそう答えると、Cさんの口からは意外な言葉が発せられました。

 

「とんでもない。御社がこうして動いてくれるのは、我々にとっても本当に有難い話なんですよ。これまでは地元に不動産屋さんが居なかったので、我々が総務の仕事を超えて、不動産屋さんの様な仕事までしないと社員の住居のお世話が出来なかったので、とても大変だったんです。我々としましては手数料を払ってでも、きちんと仲介をして頂き、契約書まで作ってくれる不動産屋さんが現れるのを本当は心待ちにしていたんですよ。ですから本日はわざわざ挨拶にまで来てくれるというので、お会い出来る事を楽しみにしていたんです。」と言って頂けたのです。

 

更には「この頂いた資料を社員食堂の掲示板に貼っておきますので、従業員から問い合わせがあったら、また御連絡致します。その時はまた御案内の方も宜しくお願い致しますね。」と言って頂きまして、私の目には正に絶望の淵に沈んで行く自分をCさんが救い上げて下さった様にしか映りませんでしたので、それこそ何度もお礼を言い、感謝感激の余韻に浸りながら大分への帰路についたのでした。

 

そしてその後、数日が経過してCさんより連絡があり「今回は数件あったうちの2物件だけですが、従業員が部屋を見たいと言うので早速ですが案内をしてもらえますか?物件名は○○と△△です。」となりまして、後日現地待ち合わせの上、従業員の方にCさんが付き添う形で物件案内をさせて頂きました。

 

そしてその従業員の方が、御案内した物件うちの1つに入居したいとのお話になり、その当時はまだ従業員の住居であっても、個人契約ではなく法人契約とする形式が殆どでしたので、その方式で契約をさせて頂く事になり、無事に入居まで終える事が出来ました。そしてその後も同様の案件を何件かお世話させて頂く事となり、無事に成約にまで至る事が出来ましたので、少しずつですがCさんとの間にも信頼関係を築いて行く事が出来ました。

 

そして時にはCさんより「今度、別の大家さんとの賃貸契約があるんですが、不動産会社が入っていないので、松岡さんの方で仲介に入って頂き、契約書も作ってもらえませんか?手数料もちゃんと支払いますよ。」との御依頼を受けるまでになりまして、着々とB株式会社の総務課との関係も深めて行く事に成功したのです。

 

そしてこれは後日談になるのですが、私がB株式会社にAさんの物件ばかり持ち込むので、総務課内ではAさんと私が親戚関係にあるのではないかとか、私の勤務している会社がAさんの関連会社ではないかとかの噂話になっていたそうで、そういった憶測も私がB株式会社の総務課からぞんざいな扱いを受けずに済む雰囲気を作り出してくれていたのではないかと思います。

 

私も私の勤める会社もAさんとは何の関係も無い存在ではありましたが、AさんにはB株式会社の従業員を何件も紹介して、入居まで順次決めて行きましたので、Aさんとも本当に仲良くなりまして、お昼近くにお邪魔した際には、わざわざ出前まで取って頂き、お昼ご飯を御馳走して頂くまでの間柄となりました。

 

さてそうなりますと、そろそろAさんへの最終ミッションを発動すべき時期が到来しつつあるのは間違いありませんでした。会社からも「そろそろ、どうなんだ?」と、これまでの前さばきが非常に長過ぎましたので、早く事を起こす様にとせっつかれてはいました。しかしものにはタイミングというものがあり、Aさんが気ぜわしい感じの時や機嫌があまり良さそうでない時には建築工事の提案は避けるべきだと考えておりましたので、商談をするつもりで伺ったものの、結局核心に触れないままで帰社した事も何度かありました。それでも会社には「期限は設けず、私の思ったタイミングでやらせて下さい。」とだけ伝えていました。

 

そしてついに建築工事の話をAさんとする日が訪れるのですが、ここから先の話はまた次の機会にさせて頂きます。